1.経営の健全化が求められている
医療や福祉の分野では、人命の尊重と公共性が第一であり、利益を追求するために改革を起こすことは、「医療の本質」に反するという意識がありました。そのうえ、行政の規制や指導を受けるので、自院の独自性を打ち出すことも難しい業界でした。
近年、高度医療機器の導入、院内感染・医療過誤防止対策、IT機器の導入による投資が増えています。また、スタッフの高齢化によって、賃金に上昇圧力がかかってきています。これらの要因から、コストは次第に増えてきています。
一方で、レセプト監視の強化、薬価差益の減少、診療報酬の改定により、医療収入は横這い・減収という状況になっています。介護分野でも、介護報酬が改定されました。それが利益を圧迫する要因になってきています。
医療費は、高齢化のために、毎年1兆円単位で上昇しており、厚生労働省は、2025年には、医療費は約70兆円になると試算しています。それは、財政支出の70%に相当します。こうした状況の中で、医療費・介護予算にも緊縮の圧力が加わってきました。
ここ1年〜2年の間に、病院・医院の経営は、急速に悪化しています。それらの病院が、赤字体質化する危険性が高まっています。
病院・医院の減収・減益が深刻化している背景には、いくつかの要素があります。
・診療報酬のマイナス改定
・薬価基準の引き下げによる差益減少
・保険点数の減点項目の増加
・医療監視の強化でレセプト返戻
・病床過剰地域での病床増加規制
・競合医療機関の増加
・職員の高齢化に伴う人件費の上昇
・高度医療機器の導入に伴う借入金・返済金の増加
・医療過誤、院内感染等の事故防止に伴う費用増加
このことは、医療・介護の質や安全性を高めるための支出が増加し、それとは逆に医療収入が低下することを意味しています。報酬が削減されるのに、支出が増加すれば、経営が悪化するのは当然です。
このように、医療・介護界の経営環境は急速に悪化しています。しかし、医療・介護界は、人の命を預かっているという理由から、また、社会性・公共性・安全性の確保が求められるという理由から、なかなか改革に踏み切れずにいます。
「行政指導や規制があるから仕方ない」「医療・福祉は、営利を追求するものではないから、一般企業のようにはいかない」といっても、誰かが、救済の手を差し伸べてくれるわけではありません。
収入が下がり、コストは上昇しているわけですから、資金繰りは確実に悪化していきます。資金繰りが悪化すると、まず、社会保険料と税金の支払いが苦しくなります。
次いで、借入金の返済が困難になります。さらに、賞与・給与の支払いが難しくなっていきます。
これらのコストは、どんなに経営が苦しくなっても、支払わねばなりません。そうしなければ、経営が維持できないからです。
したがって、これからは、「減収」になっても、生き残れる組織体質を積極的に作り出していく必要があります。つまり、医療・介護収入が下がれば、それに合わせて自動的に固定費が下がったり、原価率が下がるという体質をつくり、一方で、効率を上げ、ムダを省くという努力が必要になってきたということです。ところが、医療法人や社会福祉法人では、これがなかなか進みません。
・「病院は、国家資格者の専門家の集団だから簡単にいかない」
・「合理化すれば医療介護の品質劣化を招き、事故につながりかねない」
・「行政からのシバリがあるから、病院・施設の自由にはならない」
・「急激な改革は現場を混乱させ、取り返しのつかない事態になる」
医療法人や社会福祉法人では、これらの「できない理由」が数多くあげられてきました。しかし、実際には、経営改革に取り組み、成果を上げている病院や介護施設もありますし、一般企業の中にも、国家資格者の専門家の集団はあります。
多かれ少なかれ、日本では、どの業界も何らかの「行政からの縛り」があるのですから、これらの「できない理由」は、「できないこと」を正当化する根拠には必ずしもなっていません。
実際には、「周りの状況を見てから」といった横並び意識や「どこから手をつけてよいかわからないし、面倒だ」という先延ばし意識から、意思決定を遅らせているという側面があるのではないでしょうか。
これらの「できない理由」をあげている間にも、経営環境は確実に悪化しています。そして、改革が遅れれば遅れるほど改善は難しくなります。改革のコストも高くなります。
経営が悪化すると、医療・介護の質が低下するということにならないでしょうか。医療・介護の質が低下すると、迷惑を蒙るのは患者(国民)です。
この意味から、医療法人・社会福祉法人の経営の健全化が望まれているのです。
2.人道主義と医療技術
ところで、理事長・院長に、病院経営にとって、最も重要なものは何かということをお尋ねすると、
@人道主義
A確かな医療技術
と、お答えになります。確かに、そのとおりだと思います。
しかし、「人道主義」や「確かな医療技術」や「患者満足」という言葉だけが、皮相的に使われているということはないでしょうか? 「当院では、人道主義や確かな医療技術を実現するために、全職員が、このような活動をしている」と、明確に説明できる病院・医院は、多くはないのではないでしょうか。
いま、手許に「医療事故がとまらない(毎日新聞医療問題取材班編)」という書籍があります。こうした医療事故の実態調査をみていると、「確かな医療技術」を唱えているだけでは、確かな医療技術は確立できないということを実感いたします。
問題は、なぜ、医療事故が起きたのかということです。それは、確かな医療技術を確保するための技術・投資ができなかったからです。
また、「人道主義とかいうまえに、大病院から患者を回してもらわねば、経営がなりたたない」と、はっきりとおっしゃる病院もあります。
なぜ、人道主義よりも患者獲得が優先されるのでしょうか?
それは、大病院から患者を回してもらえなくなると病院の経営が成り立たなくなるからです。
こうして、病院の理念が曖昧なものになっていきます。なぜ、そうなるのかというと、適正な利益を確保することが出来ていないからです。
確かな医療技術を確保し、その技術を向上させていくためには、人材・設備への投資が必要になります。その資金は、病院・医院が自ら生み出さねばなりません。
「人道主義」を貫こうとすれば、もちろん、そのことだけで「人道主義」が確立できるわけではありませんが、他者から独立して、病院経営を成り立たせることが必要なこともあります。
他者から独立して経営が成り立つということは、患者から支えられる病院・医院になるということです。患者から支えられる病院・医院になるには、その前提である「人道主義」「確かな医療技術」を実現しなければなりません。
ところが、「人道主義」「確かな医療技術」は、そう思っているだけでは実現できません。それらを実現するための「手段」が必要になります。
まず第1に、そもそも「人道主義」「確かな医療技術」が、何を意味するのかは、各病院・医院によって異なるはずですから、自院が確立しようとしている「人道主義」「確かな医療技術」が何であるかを、スタッフ全員が理解できるようにする必要があります。
次に、「人道主義」「確かな医療技術」を達成することを目標に設定して、その目標を実現する手段(戦略)を策定しなければなりません。ここまでは、理事長や院長お1人で出来ます。
しかし、その理念や戦略は策定しただけでは、絵に描いた餅にすぎません。その戦略目標(「人道主義」「確かな医療技術」)を実現するには、病院・医院のスタッフの皆さんに、実際に、戦略目標を達成するように活動していただかねばなりません。
多くの病院・医院では、理念(たとえば、「人道主義」「確かな医療技術」)と、それらを実現するための手段(戦略:診療科目・介護科目、診療圏・患者層、提供方法)は設定されています。
ただし、それらが、曖昧に設定されており、「スタッフ1人ひとりが、どのような能力を身につけ、当院のどこを、どのように改善すると、医療・介護プロセスのどこが、どのように改善されて、どのように治療・介護の効果を高めて、どの患者層の満足を高め、それによって、どのような患者層が増えて、病院全体として、どれだけの利益となり、したがって、医療技術向上のために、いくらの投資ができるか」という病院経営のプロセスが不明確なままにされています。
3.マネジメントシステム
これらのことが明確にならなければ、今年は、どのような教育訓練をどの程度行うか、病院のどこをどれだけ改善するのか、どのような患者層にどのように働きかけるのか、医療技術向上のために、いくら投資するのかが決定できません。
そもそも、「病院の経営が成り立つのか」ということもわかりません。財務諸表で利益を管理しているから大丈夫だという意見もあると思います。
しかし、過去に倒産した病院も財務諸表を作成していなかった病院は、おそらく、1件もありません。財務諸表があるのに、なぜ倒産したかというと、財務諸表は、過去の結果を記したものであり、将来のことを示すものではないからです。
財務諸表上の利益が過去最高を示していたとき、急速な顧客離れが起きていたというのは、実は、よくあることなのです。ある病院で、入院患者が、治療費・入院費の「不払い運動」を起こしたことがありました。
マネジメントシステムとは、目標(たとえば「人道主義」「確かな医療技術」)を実現するための活動を定め、スタッフ全員を目標実現に向けて動かしていく「仕組み」です。マネジメントシステムの代表的なものとして、「病院機能評価」「ISO9001」「人事評価制度」があります。
これらのマネジメントシステムのよいところは、最初に顧客(患者)の利益が計画され、その顧客(患者)の利益を実現することによって、組織の利益が実現されるような仕組みになっているところにあります。
したがって、しっかりしたマネジメントシステムを導入することが、スタッフの皆さんの意欲を向上させ、医療の技術を高め、患者の皆さんに喜んでもらい、病院の経営を安定化させ、病院の理念を実現するための緊急の課題なのです。
株式会社 湊屋総研は、病院機能評価、ISO9001・ISO14001、人間工学、人事評価制度、バランスト・スコアカードなどのマネジメントシステムの導入のご支援をやってまいりました。
また、新入社員研修、管理者研修、経営者研修による能力向上を通じて、病院・医院・介護施設を支援するコンサルティング活動を展開しています。
本ホームページでは、近年、とくにニーズが高まってきております以下のシステムを、ご紹介させていただきます。ご一読賜れば幸いでございます。
なお、本ホームページにつきまして、ご質問、ご相談がございましたならば、株式会社 湊屋総研までお問い合わせください。

